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2006年7月 4日 (火)

アリス・コレクション~フィギュアの著作権~【松井】


 数年前、友人の執務机をふと見る機会がありました。一見していわゆるおもちゃと分かるアリスやうさぎの5センチもない人形が数点、飾るようにして並べてありました。
 何それと訊くと、おもちゃ付きお菓子で売られているシリーズの人形で、よく出来ていて可愛いのでコレクションしているということでした。
 その数年後。判例時報1928(18年7月1日号)号で、「菓子のおまけ用フィギュア製造のための模型原型の著作物性が認められた事例」として大阪高裁平成17年7月28日の判決が紹介されいていました。
 訴訟は、原告・海洋堂、被告・フルタ製菓というものです。

2 
 おまけはチョコエッグなどのおまけとしてシリーズ化されており、争いになったのは、動物シリーズ、妖怪シリーズ、そしてアリスコレクションの3シリーズでした。原審は、全てについて著作物性を否定していたところ、控訴審は妖怪シリーズについてだけ、著作物性を認めました。
 「本件妖怪フィギュアに係る模型原型は、石燕の『画図百鬼夜行』を原画とするものと、そうでないもののいずれにおいても、一定の美的感覚を備えた一般人を基準に、純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価されるものと認められるから、応用美術の著作物に該当するというのが相当である。」。
 
 決めては、これでしょうか。「本件妖怪フィギュアは、石燕の原画を忠実に立体化したものではなく、随所に制作者独自の解釈、アレンジが加えられていること、妖怪本体のほかに、制作者において独自に設定した背景ないし場面も含めて構成されていること(特に、前記認定の「鎌鼬」、「河童」や「土蜘蛛」が源頼光及び渡部綱に退治され、切り裂かれた腹から多数の髑髏がはみ出している場面などは、ある種の物語性を帯びた造形であると評することさえも可能であって、著しく独創的であると評価することができる。)、色彩についても独特な菜食をしたものである」。
 ちなみに、「鎌鼬」は、「石地蔵の首を鎌で切っている場面」、「河童」は、「水死体から『尻子玉』を抜き取っている場面」のようです。
 
 一方、動物シリーズ、アリスコレクションは、妖怪シリーズに比べたら、独創性がいまいちだったという評価のようです。

3 
 ちなみに、問題となる条文は次のとおりです。
 著作権法2条1項1号 著作物の定義
  「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術
  又は音楽の範囲に属するもの」
 同法10条
  「絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物」(1項4号)。
 同法2条2項
  「この法律にいう『美術の著作物』には、美術工芸品を含むものとする。」

 そして解釈規範として本判例は次のように示しました。
 ①美術的創作物
  ー1 純粋美術
     「思想又は感情を創作的に表現したものであって、制作者が
     当該作品を専ら鑑賞の対象とする目的で制作し、かつ、
  一般的平均人が上記目的で制作されたものと受け取るもの」
  ー2 応用美術
     「思想又は感情を創作的に表現したものであるけれども、
     制作者が当該作品を上記目的以外の目的で制作し、
     又は、一般的平均人が上記目的以外の目的で制作
     されたものと受け取るもの」
      +
     「制作者が当該作品を実用に供される物品に応用されることを目的(実用
     目的)として制作し、又は、一般的平均人が当該作品を実用目的で制作
     されたものと受け取るもの

 ②「美術の著作物」は、純粋美術に限定されない。
   なぜなら、著作物の例示中に「絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物」と
   挙げて、「美術の著作物」には「美術工芸品」を含むと規定しているから。
   しかし、応用美術が「美術の工芸品」に該当するか否かは、条文上、不明確。

 ③そこで解釈!
   結局、応用美術の分類、さらには意匠法との保護範囲の比較検討を踏まえ、
   「応用美術一般に著作権法による保護が及ぶものとまで解することは
   出来ない」けど、
   「応用美術であっても、実用性や機能性とは別に、独立して美的鑑賞の
   対象となるだけの美術性を有するに至っているため、一定の美的感覚を
   備えた一般人を基準に、純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を
   具備していると評価される場合は、『美術の著作物』として、
   著作権法の保護の対象となる場合があるものと解するのが相当である。」
  と判示しました。

4 
 著作権については、それこそ意匠法などとは異なり、設定登録の必要がありません。そういったこともあり、そもそも著作権が生じるのか否か、著作物性そのものが争われることがしばしばあります。
 刑事訴訟においても、人形おもちゃに著作権が認められるとして類似品を無断で製造販売して著作権法違反で逮捕されたところ、そもそもその人形には著作物性はないとして争って、原審がこれを認め、無罪判決となった裁判例もありました。
 海洋堂のアリスコレクションについても、友人は、まさに美的鑑賞の対象として、また物語性を感じながら机の上に並べていましたが、この判例はアリスコレクションについてはテニエルの挿絵を立体化したものにすぎないとして、著作物性を否定しました。


 にしても紛争の経緯で興味深いのは、業界の実態に触れた部分です。
 「従来、菓子製造業者とおまけ製造業者が、おまけとなる模型原型の制作契約を締結する場合は、模型原型の制作請負契約を締結し、請負代金は一体あたり数万円から十数万円であった。
  おまけ製造業者である原告の○○専務取締役は、優れた模型原型を制作しても、わずかな対価しか得ることができず、こうした状況に不満と矛盾を感じており、原告の制作した模型はアニメやディズニーのキャラクターと同等か、それ以上の価値があり、著作物であると主張できると考えていた。」
 そして、フルタとは、制作請負契約ではなく、著作権使用許諾契約とし、対価は請負代金ではなくロイヤルティ方式にしたという。これは、希望小売価格の2.5~3%だったということです。
 業者としてのプライドを感じました。確かに、あのフィギュアはプライドをもってもいい出来ですもんね。
 妖怪シリーズ、判例の表現を読んでいるだけでもどんなフィギュアだろうとドキドキします。見てみたい。再発売されたら買います。で、机の上に並べておきます。
 そうそう。海洋堂は、この訴訟で1億8000万円以上の請求が認められたようです。フルタが製造数量を過小報告したというものです。
(おわり)
 
 

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