2018年10月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

最近のコメント

最近のトラックバック

無料ブログはココログ

flickr


« 2006年6月 | トップページ | 2006年8月 »

2006年7月

2006年7月26日 (水)

遺産分割事件 ~どこでもめるかで5年、10年~【松井】


 判例タイムズ1207(2006.6.15)号に、岡部喜代子教授の「遺産分割事件の職分管轄に関する一試案」というものが掲載されていました。
 今、なぜこの時期に一試案なのかというのも不思議な気がしたけど、代理人としてこの問題に身をおいて、事態を切実にとらえられるようになっていたので興味深く読みました。

 この一試案は、端的には、

従前より、遺産分割事件が家庭裁判所に、遺産分割関連訴訟事件が地方裁判所に係属することによる不都合、不便が指摘されてきた。本稿は、この問題を、地方裁判所に遺産分割関連訴訟が提起された場合に遺産分割事件(寄与分を含む)を附帯申立てとして申し立てることを許すという制度によって、改善する方法を提案するものである。(同39頁)
というものです。

 なるほど、確かに実効性のありそうな一試案だと思いました。



 遺産分割申立、寄与分を定める処分の申立の事件で、家庭裁判所が審判をだすとだいたい次のような様子で、事柄、項目を摘示されます。

【主文】

遺産に対する寄与分を○○円と定める

○○は遺産である○○を取得する。

○○は、○○に、遺産取得の代償として、金○○円を支払え。

手続費用のうち、鑑定人に支払った分は、これを○分し、○○負担とし、その余の手続費用を各自の負担とする。


【理由】
 一件記録、審問の結果、証言、鑑定の結果に基づく
 当裁判所の事実認定及び法的判断


①相続の開始
②相続人
③相続分


④遺産
 遺産として預貯金、株式、現金も幾らか存在した旨の主張をしているが、具体的な事実を認めるに足りる証拠はない。


⑤遺産の評価

相続時
審判時


⑥遺産に対する寄与分

 審問の結果、贈与したことが認められる。
 しかし、寄与の時から相続開始時までに相当の年月が経過していることなどを考慮すると、寄与と残存する遺産内容との因果関係は不明確であり、遺産に対する寄与分は、これを認めないのが相当である。


⑦特別受益

 以上の事情を総合し、生計の資本として金○○円程度の贈与を受けたものと推認する。 結局のところ、特別受益の金額を○○円と認める。

 特別受益にあたる金銭贈与の持戻しの場合には、贈与の時の金額を相続開始の時の貨幣価値に換算した価額をもって評価しなければならない(最高裁判所昭和51年3月18日民集第30巻2号111頁)。


⑧本来的相続分の算定

 遺産の相続開始時における評価額合計は○○円である。
 特別受益は○○円
 寄与分は○○円


 みなし相続財産の価額は、○○円+○○円ー○○円=○○円となる。

 法定相続分は○○であるから、各人の本来的相続分は、次のとおりである。

 ●円
 ●円
 ●円


⑨具体的相続分

 遺産の審判時の評価額合計は○○円であり、本来的相続分の合計金額は○○円であるから、各人の具体的相続分は、次のとおりである。

 ▼円
 ▼円
 ▼円


⑩当裁判所の定める分割方法
 遺産の性質、遺産取得者の生活状況等を考慮し、○○。

以上


3 
 審判に不服があれば、高等裁判所に即時抗告できます。
 上記のように、一応、家庭裁判所は遺産の範囲などについても審判書において判断をすることは出来ます。
 しかし、その判断に「既判力」はないとされています。
 「既判力」とは、地方裁判所の判決などには認められています。どういうものかというと、字に現れたごとく、既に判断したことについては争えない効力です。

 この既判力が審判書にないということは、審判手続きにおいて、遺産の範囲について争って裁判所が判断したとしても、文句のある当事者は、改めて地方裁判所に遺産の範囲の確認を求める訴えを提起して、地方裁判所は異なる判断が出来るということです。

 なので、普通は、遺産の範囲に争いがあるとなれば、地方裁判所、高等裁判所で争って判断をもらってきてください、その判断を前提に、改めて家庭裁判所で遺産分割協議をしなさいということになります。二度手間を避けるためです。

 とはいえ、これでは当事者は、地方裁判所で遺産の範囲だけを争い、その結果が出てから改めて一から遺産分割協議を行うことになります。
 これが、先に述べられた「不都合、不便」です。
 
 争点は、遺産の範囲だけではありません。誰が相続人かといったことについて問題となったときも同様です。
 法律上は、訴訟事項、つまり家庭裁判所ではなく、地方裁判所等で通常の一般民事事件として争われるべき事柄は訴訟で解決するのが本筋ですよというものがあり、これについては全て同様です。

4 
 以上のような不便さ、不都合について、岡部教授は、地方裁判所で争われたなら、そのときに遺産分割協議の前提問題だけでなく、「附帯申立」というかたちで遺産分割協議そのものについても一気に地方裁判所で解決したらどうですかと提案するものです。
 
 岡部教授は記します。
 

遺産関係紛争は、多くの一般国民が直面する紛争であり、それは、かなり困難な事件となることがあり、一般国民が最も悩み心痛する事件であろうことは想像に難くない。このような事件について、長期に及び、また、紛争解決の困難性をそのまま放置することは、司法制度としてやはり何らかの欠陥があると思われてしまうのではなかろうか。司法改革の一環として人事訴訟はじめ、多くの改革がなされ、司法が国民により身近に、より使いやすいものになった。遺産関連紛争が従前どおり地裁と家裁で分離しているということは制度上の問題があると指摘されてもやむを得まい。

 
 相続問題が続くなかで自身が関わった弁護士あるいは裁判官に対する不信感を口にされる相談者、依頼者の方々に何人もお会いしました。
 担当した弁護士が知識不十分なのか、説明不足なのか、裁判官が記録を読まないのか、当事者の声に耳を傾けないのか、あるいはまさに制度上やむを得ないことなのか、証拠上、法律上、やむを得ないことなのか、理由はいろいろとあるかとは思います。
 が、理由はともかく、ただただその場に置かれた当事者の方の「心痛」を思うと、こちらも胸が痛む思いがし、なんともいえないやるせない気分になってしまうのです。相続事件で5年も10年も争わざるをえなかった方々の声を聞くと。
 トライ&エラーであっても、この制度上の問題は早急に手を打たれるべき問題だと考えています。
(おわり)

2006年7月14日 (金)

燃える闘魂?~騙しの仕組み~【松井】


 大阪弁護士会では委員会活動というのが活発です。大橋は人権擁護委員会に属し、刑務所に服役中の人からの人権救済の申立ての調査、つまり職員から暴行を受けたなどの手紙があれば出向いて聞き取りをするといったことを行ったり、借金から逃げてホームレスになった人などのために無料法律相談で借金対策をアドバイスしたりといったことをしています。
 私はというと、弁護士1年目から消費者保護委員会に属し、消費者被害事件の弁護団に参加したり、弁護士会主催の被害者説明会の開催を手伝ったりといったことをしてり、月1回の委員会に出席し、部会長のもと、情報交換や現在は来年施行予定の消費者契約法、団体訴権の勉強会などに参加しています。

2 
 他の弁護士と話をしていると、いわゆる消費者事件は好きではない、よくやれるよねといった話しになることがあります。消費者被害と言っても、そもそも欲目を出したからひっかかっただけじゃないのか、鴨られるほうにも落ち度があるし、一概に「被害者」というには抵抗があるといったニュアンスです。
 もっとも、私から大橋を見た場合でも、土曜日の晩にホームレスの人の夜回りをやったりと、よくそこまで出来るものだと関心します。
 言えることは、こういった活動をしている弁護士はこれを収入に結びつけるなどということはこれっぽちも思っていないということです。
 なのに、なぜ、きみはいくのか、そんなにしてまで♪


 消費者事件に関わるのは、単純に、騙す方が許せないというただそれだけの思いだと思います。騙す方は、騙される方の知識のなさ、押しの弱さなどを巧妙に利用しています。知識がない方がおかしい、悪いという見方をされがちですが、「そもそも騙す方が悪い」というこの信念で動いていると思います。
 大阪市には消費者センターというものがあります。相談員の方々は、消費者からの電話相談などに無料で、熱心に、親身にのっています。発想は、なんとか助けられないだろうかというものです。その原動力はやはり、業者ー消費者という構図の中で業者がまずきちんとすべきという思いでしょう。もちろん一方で、消費者も情報を持ちましょうということもいえると思います。

4 
 最近、あった騙しの仕組みです。とはいえ、やはりまた布団モニター商法のダンシング事件などと同様、信販会社が金の出所として悪用されています。
  

  
     レンタル会社 30


         販売店 100

    
     
 消費者 10        信販会社
   
      5(×22)=110

 
 消費者は、騙し人Xから、販売店から絵画、宝飾類などを購入するように勧められます。仕組みは、こうです。販売店から物を買うかたちであるが、手元に商品はこない。これはそのまま、レンタル会社にレンタルする。レンタル会社は、あなたに月々の賃料というかたちでお金を振り込みます。
 商品は、70万円、80万円です。なに?!まとまったお金がなくても大丈夫。信販会社のこの契約書に署名・押印すれば大丈夫。あなたのもとに信販会社から月々の請求がありますが、レンタル会社からの賃料で賄える金額です。さ、この契約書とこの契約書とこの契約書に署名してください。

 つまり、こういうことです。こうして信販会社から、100のお金を引き出します。このお金は加盟店の販売店に入ります。で、この仕組みでは必ず、販売店からレンタル会社にお金が流れています。レンタル会社には仮に30のお金が入ります。レンタル会社はこのうちから、最初の100からすれば絞りかすのような10のお金を消費者に振込ます。
 そして、消費者に対しては、信販会社からの月々の請求は5しかないので、入る10から5をひいても、あなたの手元には5が残るという説明をするのです。

 しかし、ポイントはこの信販会社からの請求は、「月々5」というところです。5の裏には、信販会社のもうけを上乗せした22という分割回数、すなわち110という数字が控えているのです。

 ここで想像してみてください。レンタル会社からの振込みの10が消えたら、どうなるかを。

 仕組みとしては、当然、レンタル会社は早晩、行方をくらませることになります。
 現に、くらましています。株式会社を名乗っていましたが、そもそも会社として登記されていなかった可能性が高まっています。となると、ことは簡単、全て初めから仕組まれた騙しのカラクリです。

 金の動き、誰がもうかるのかをかんがえれば、カラクリは簡単です。

 
 ちなみに、ダンシング事件では、こんなレンタル会社なんてものは登場せず、もっと単純に、加盟店から消費者のもとへお金がいく仕組みでした。
 しかしこれについては、高等裁判所で、早晩、破綻必至の仕組みとされてます。
 じゃあ、レンタル会社をかませればよいのかという問題です。

 そしてさらに考える必要があるのが、なぜ消費者が、考えれば分かるこんなカモにされる話しについて、各社との契約書に署名しているのかということです。
 レンタル会社からの10と信販会社への支払い5の収支を考え、5で儲けられるなどと本気で思って契約しているのか否かということです。
 ダンシング事件の場合もそうでしたが、ここでまた巧妙にとにかく契約書に署名させるのです。
まずは人と人との繋がりが利用されます。
断れない状況にもっていきます。
そのうえで、損することはないという説明です。
「少なくとも損をさせられることはないだろう。」「害まではないだろ」、消費者は、自分で自分をこう思いこませて、最後のジャンプをしてしまうのです。

 こんな構図のもとでいわば食い物にされた消費者が信販会社に110を支払う義務があるのか。
 おかしいんじゃないの!?本当に儲けているのは誰なのか?黒幕は?
 
 儲けるなら正々堂々と。
 これが消費者問題に関しての、燃える闘魂の火種となっているのだと思います。

(おわり)

2006年7月 4日 (火)

アリス・コレクション~フィギュアの著作権~【松井】


 数年前、友人の執務机をふと見る機会がありました。一見していわゆるおもちゃと分かるアリスやうさぎの5センチもない人形が数点、飾るようにして並べてありました。
 何それと訊くと、おもちゃ付きお菓子で売られているシリーズの人形で、よく出来ていて可愛いのでコレクションしているということでした。
 その数年後。判例時報1928(18年7月1日号)号で、「菓子のおまけ用フィギュア製造のための模型原型の著作物性が認められた事例」として大阪高裁平成17年7月28日の判決が紹介されいていました。
 訴訟は、原告・海洋堂、被告・フルタ製菓というものです。

2 
 おまけはチョコエッグなどのおまけとしてシリーズ化されており、争いになったのは、動物シリーズ、妖怪シリーズ、そしてアリスコレクションの3シリーズでした。原審は、全てについて著作物性を否定していたところ、控訴審は妖怪シリーズについてだけ、著作物性を認めました。
 「本件妖怪フィギュアに係る模型原型は、石燕の『画図百鬼夜行』を原画とするものと、そうでないもののいずれにおいても、一定の美的感覚を備えた一般人を基準に、純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価されるものと認められるから、応用美術の著作物に該当するというのが相当である。」。
 
 決めては、これでしょうか。「本件妖怪フィギュアは、石燕の原画を忠実に立体化したものではなく、随所に制作者独自の解釈、アレンジが加えられていること、妖怪本体のほかに、制作者において独自に設定した背景ないし場面も含めて構成されていること(特に、前記認定の「鎌鼬」、「河童」や「土蜘蛛」が源頼光及び渡部綱に退治され、切り裂かれた腹から多数の髑髏がはみ出している場面などは、ある種の物語性を帯びた造形であると評することさえも可能であって、著しく独創的であると評価することができる。)、色彩についても独特な菜食をしたものである」。
 ちなみに、「鎌鼬」は、「石地蔵の首を鎌で切っている場面」、「河童」は、「水死体から『尻子玉』を抜き取っている場面」のようです。
 
 一方、動物シリーズ、アリスコレクションは、妖怪シリーズに比べたら、独創性がいまいちだったという評価のようです。

3 
 ちなみに、問題となる条文は次のとおりです。
 著作権法2条1項1号 著作物の定義
  「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術
  又は音楽の範囲に属するもの」
 同法10条
  「絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物」(1項4号)。
 同法2条2項
  「この法律にいう『美術の著作物』には、美術工芸品を含むものとする。」

 そして解釈規範として本判例は次のように示しました。
 ①美術的創作物
  ー1 純粋美術
     「思想又は感情を創作的に表現したものであって、制作者が
     当該作品を専ら鑑賞の対象とする目的で制作し、かつ、
  一般的平均人が上記目的で制作されたものと受け取るもの」
  ー2 応用美術
     「思想又は感情を創作的に表現したものであるけれども、
     制作者が当該作品を上記目的以外の目的で制作し、
     又は、一般的平均人が上記目的以外の目的で制作
     されたものと受け取るもの」
      +
     「制作者が当該作品を実用に供される物品に応用されることを目的(実用
     目的)として制作し、又は、一般的平均人が当該作品を実用目的で制作
     されたものと受け取るもの

 ②「美術の著作物」は、純粋美術に限定されない。
   なぜなら、著作物の例示中に「絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物」と
   挙げて、「美術の著作物」には「美術工芸品」を含むと規定しているから。
   しかし、応用美術が「美術の工芸品」に該当するか否かは、条文上、不明確。

 ③そこで解釈!
   結局、応用美術の分類、さらには意匠法との保護範囲の比較検討を踏まえ、
   「応用美術一般に著作権法による保護が及ぶものとまで解することは
   出来ない」けど、
   「応用美術であっても、実用性や機能性とは別に、独立して美的鑑賞の
   対象となるだけの美術性を有するに至っているため、一定の美的感覚を
   備えた一般人を基準に、純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を
   具備していると評価される場合は、『美術の著作物』として、
   著作権法の保護の対象となる場合があるものと解するのが相当である。」
  と判示しました。

4 
 著作権については、それこそ意匠法などとは異なり、設定登録の必要がありません。そういったこともあり、そもそも著作権が生じるのか否か、著作物性そのものが争われることがしばしばあります。
 刑事訴訟においても、人形おもちゃに著作権が認められるとして類似品を無断で製造販売して著作権法違反で逮捕されたところ、そもそもその人形には著作物性はないとして争って、原審がこれを認め、無罪判決となった裁判例もありました。
 海洋堂のアリスコレクションについても、友人は、まさに美的鑑賞の対象として、また物語性を感じながら机の上に並べていましたが、この判例はアリスコレクションについてはテニエルの挿絵を立体化したものにすぎないとして、著作物性を否定しました。


 にしても紛争の経緯で興味深いのは、業界の実態に触れた部分です。
 「従来、菓子製造業者とおまけ製造業者が、おまけとなる模型原型の制作契約を締結する場合は、模型原型の制作請負契約を締結し、請負代金は一体あたり数万円から十数万円であった。
  おまけ製造業者である原告の○○専務取締役は、優れた模型原型を制作しても、わずかな対価しか得ることができず、こうした状況に不満と矛盾を感じており、原告の制作した模型はアニメやディズニーのキャラクターと同等か、それ以上の価値があり、著作物であると主張できると考えていた。」
 そして、フルタとは、制作請負契約ではなく、著作権使用許諾契約とし、対価は請負代金ではなくロイヤルティ方式にしたという。これは、希望小売価格の2.5~3%だったということです。
 業者としてのプライドを感じました。確かに、あのフィギュアはプライドをもってもいい出来ですもんね。
 妖怪シリーズ、判例の表現を読んでいるだけでもどんなフィギュアだろうとドキドキします。見てみたい。再発売されたら買います。で、机の上に並べておきます。
 そうそう。海洋堂は、この訴訟で1億8000万円以上の請求が認められたようです。フルタが製造数量を過小報告したというものです。
(おわり)
 
 

« 2006年6月 | トップページ | 2006年8月 »