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2006年6月 2日 (金)

裁判官とのコミュニケーション ~効果的な訴訟活動のために~【松井】

1 
 裁判・訴訟手続きとは、相手方との口喧嘩ではありません。もちろん。相手が意に反する主張を行い、それに対する反論を行うこと、そのものが目的ではありません。

2 
 判決・結論を出すのは裁判官です。裁判官は何について結論を出すのかというと、原告の訴えに理由があるか否かです。
 原告の訴えは、「請求の趣旨」として、金○○円を払え、あるいは登記手続きをしろ、あるいは遺言が無効であることを確認しろといった簡潔な表示がなされます。
 この原告の訴えを基礎づけるものとして、「請求の理由」が主張され、お金を返してもらう約束でお金を渡したのに、返してくれない、あるいは遺言書作成当時、おじいちゃんは意識不明だった、といった具体的事実を主張立証していくことになります。


 事実の主張は、請求の趣旨を基礎づけるためのものです。相手方に反論するためのものではありません。
 となると、主張を訴えるべき相手は誰なのか?
 誰を説得しないといけないのか?
 相手方ではありません。裁判官です。
 相手方にぐうの音をはかせることが裁判の目的ではありません。


 ということから、裁判官にこちらに有利な判決をいかに書いてもらうのかという手段が問題となります。
 決定的な客観的証拠があれば、それを提出すればすみます。しかし、裁判になるような事件でそのような場合は稀です。
 裁判官に有利な判決を書いてもらうには、裁判官に喧嘩を売ったって無意味です。裁判官を怒らせたって得することはないでしょう。裁判官も人間です。
 そこでいかにサービス精神を発揮させるのかということが大事なのではないかと思います。


 サービス精神。
 それは手取り足取り、もっていきたい方向へいかに裁判所をエスコートできるかということです。
 サッカーで、パスを出し、これでシュートを決められない選手が悪いといっても始まりません。シュートを決められるようなパスを出す方に責任があるといえます。

 そこで大事なのはサッカーでも同じだと思いますが、コミュニケーションです。一人でやっているのではないということです。
 コミュニケーションとは相手が何を考えているのか、どう感じているのかということを知ろうとすることだと思います。

6 
 ということで、近畿弁護士連合会、通称近弁連の雑誌83号に掲載せれていた「大阪高等裁判所と近畿弁護士連合会民事控訴審運用改善協議会との民事控訴審の審理充実に関する意見交換会」についてのレポートをここに自分用にメモしておきます。

 まあ、要は、高等裁判所の裁判官から弁護士に対する苦言・要望です。

以下、
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

1 控訴理由書、準備書面の提出期限の厳守

  印象として、50日の期限が守られている事件はほとんどない。
  1回目催告後提出 20%
  2回目催告後提出 50%
  第1回期日直前がかなりある。
  被控訴人の反論も踏まえて充実した心理を行うということが出来ない。

2 控訴理由書の内容面1

  分量だけが多く、かえってわかりにくいものが多い。
  原審判のどの部分に不服があるのかを1枚程度の「要旨書」で明らかにして欲しい。
  原審通りの主張部分は、「原審第○準備書面第○項の通り」の記載でOK。
  書証や人証も調書の該当部分の引用でOK。再度の記載は、不要。
  
  小見出し、目次を作成するといった工夫をして欲しい。

3 控訴理由書の内容面2

  原判決の「当事者の主張」欄の記載に過不足があるなら、控訴理由書でその旨を明示して欲しい。
  判例・通説では、「原判決事実適示の通り原審口頭弁論の結果陳述」とすると、第一審で主張され第一審判決に記載されていない事実は控訴審の裁判の資料にならない。

4 証拠説明書を提出して欲しい。
  一覧性のあるもの、かつ主張との関連性が簡潔に引用されているものがベター。

5 文書送付嘱託、調査嘱託の申請は、第1回期日前、おそくとも控訴理由書提出までに。

6 原審で却下された証拠について控訴審において証拠調べを求めるときは、再度証拠申請書を提出し、控訴審で証拠調べする必要性を十分記載してほしい。

7 書証を提出する期日には、書証原本の持参を。

8 陳述書の証拠価値
  証人尋問を経ない陳述書の証拠価値は、非常に低い、あるいはほとんどない。
  人証申請のない陳述書を認めるべきでないと思う。
  証人尋問終了後に提出された陳述書についても、同様。

  裁判所も弁護士も陳述書の危険性についての感覚が鈍磨しているように思う。
  陳述書は、準備書面と証拠の間を埋める程度のものという理解。
  常に、反対尋問の機会は保障するようにしている。

  陳述書は作文。
  心証は証人尋問で直接取るべきもの。
  ところが、陳述書のみで判決している事案がある。
  裁判所もどうかと思うが、証人申請をしていない弁護士の対応にも問題がある。

  陳述書の印象と尋問結果の印象が一致することはほとんどない。
  やはり事実認定には、主尋問が必要である(反対尋問を強調しすぎる必要はない)。
  このことを若手の裁判官や弁護士に伝えていく必要がある。

以上
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


 なるほどなあと思う次第です。まぁ、レベルが低い話もなくはありませんが・・・。
 ちなみに、陳述書を出しながらその陳述者の証人申請をしない代理人弁護士というのは、おそらく自らその陳述書の価値に重きを置いていないということなのだと思います。だからこそ、裁判所も価値をおかないということは当然だと思います。

 自戒の意味で、弁護士年数が経ってくると、おそらく思いこみ、独りよがりの訴訟活動というものが増える可能性も高まるわけで、主張や証拠の提出、あるいは尋問においても、まったく独りよがりの活動しか出来なくなってしまう可能性もおおいにあるわけで。
 こういう裁判所の声も、修習中は裁判所に身をおき裁判所の中からいろいろと目にし、耳にする機会もあるのですが、弁護士になると意識していないとなかなか耳に入りません。
 そういう意味では、こういった協議会とその協議の結果の発表というのは素晴らしいシステムだなあと思っています。
 かといって裁判所にこびを売る、おもねることを良しとするわけでは決してありません。
 よき緊張関係とでもいうんですかね。

 7月、控訴審第1回となる事件が3件も重なっています。
 ということで、控訴審裁判官が何を考えているのか、多少、参考になりました。

(おわり) 

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