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2006年5月 7日 (日)

「公正」と「公正らしさ」~弁護士の利益相反問題~【松井】


 5月3日付けの朝日新聞で、米国の弁護士の意見が載っていました。
 保険会社の保険金不払いが問題とされた中、保険会社が、自社の保険金不払いの決定に対して、不服申立制度を自社で整える、その際、自社が弁護士費用を支払った弁護士に相談できますよというサービスについてのものでした。
 何が問題なのか?
 相談した弁護士は、一体、誰の味方なのか、ということでしょう。


 自身が問題の処理に困って弁護士の法的アドバイスを求めたとします。その際、その弁護士が実は紛争の相手方から弁護士費用を支払われた弁護士だったら、その弁護士が自分の利益を守ってくれると信頼できるでしょうか。
 紛争の当事者について双方の代理人となってはいけない、というのはある意味当然のことです。弁護士の場合、利益相反のチェックといって依頼を受けるときこれを必ずチェックします。うちの事務所のように複数の弁護士がいる事務所では、所属弁護士間での利益相反のチェックもしています。
 そして相談をされた方の紛争の相手方が、顧問先であったりすれば当然、依頼はお断りします。これを秘して受任した場合、弁護士会による懲戒対象となるでしょう。


 では、紛争当事者が共に、利益相反でも構わない、相手方の代理人であっても構わないと、事態を理解したうえで了解した場合はどうでしょうか?
 実は、これが認められているのが、相続の遺産分割事件の場合です。例えば、兄弟6人で遺産分割についてもめたとき、よくあるのが姉妹3人は一致団結しており、長男、次男、三男とそれぞれ対立しているという場面です。
 このとき最初、弁護士は、姉妹3人なら3人が一緒に事務所を訪れ、相談を受けます。そして遺産分割調停の申立を依頼されます。
 しかし実は、姉妹3人が一致団結といっても、相続事件は基本的に相続人それぞれがある意味、一つのパイの分け方を巡って争う立場にあり、この姉妹も利害が対立するものです。
 今は、対男兄弟ということで利害が一致していても、協議が進む中で3人の利害が一致しないことも十分にあり得ます。
 では、利害相反ですから、3人からの依頼は受けられませんというのが果たしていいのかどうか。
 これもまた非現実的な面があります。弁護士コストの問題である。一人一人が弁護士を依頼するとなるとそれなりの費用になりますが、3人の利害が一致しているという前提で3人から依頼を受けるとき、弁護士費用は多少は割安になります。
 そこで、弁護士は、依頼を受ける際、利益相反の状態を説明したうえで、利害対立が表面化した場合は辞任する旨を伝え、それでもというときに同意書をもらって依頼を受けます。
 そして裁判所に委任状を提出する際にはこの同意書も提出します。


 この相続の場合と比べて、保険会社が費用を支払い、用意した弁護士が、保険金不払いの相談を受けるということについて、やはり耐え難い問題があるといえるのか否か。
 相談者が事態の説明を受け、了解しているなら問題がないともいえそうです。
 弁護士においても、保険会社から費用をもらっているからといって、相談者からの相談によって職務上知り得た事柄を保険会社に流せば、守秘義務違反となっておそらく懲戒の対象となるでしょう。なので、米国の弁護士が指摘しているような事態、相談者が金に困って早く解決したがっているということを会社に伝えるといった事態は起こりにくいのではないかと思います。


 しかし、おそらく新聞の米国の弁護士がもっとも問題と指摘しているのは次の点なのだと思います。
 弁護士がいくら、会社からお金をもらっていても「第三者的な立場」で相談者のために相談にのりますよと「公正」に仕事をすることを口にしても、問題なのは、そもそも「公正らしさ」の確保であると。
 「公正」か否かは見えないものなのでなかなか判断できません。結果さえ公正であればいいといっても、その結果がよく見えません。
 そこで大切なのが、「公正らしさ」を保つことです。
 
 この米国の弁護士の指摘を読んで思い出しました。
 刑法の「汚職の罪」です。
 刑法では、公務員は職務に関して賄賂を収受してはいけないと定め、さらに賄賂を受け取って不正な行為を為したときは罪を加重しています。
 不正な行為さえしなければ、お金を受け取っても問題ないとはいえない、ということです。
 このとき刑法の基本書に書いてあったのはこの罰条の保護法益は、「公正らしさ」である、ということでした。簡単に言えば、疑われるようなことはしなさんな、ということです。
 保険会社からお金をもらっても、相談者の利益のために動いていれば問題ない、といえるのでしょうか。既に米国の弁護士からは疑われています。
 相続事件の場合と何が違うのか。考えどころだと思います。


 ところで。刑法にはその刑罰でいかなる利益を守ろうとするのかという保護法益が常にあります。「共謀罪」の保護法益は何でしょうか?協議だけで罪になるといえば、内乱の陰謀の罪くらいしかありませんが。共謀罪の法益はそこまでして保護すべき法益?刑罰は自由を制限しつつ、法益を保護しようとするものであって、適量を間違えると自由を即死させる毒薬だというのは私が愛用していた刑法の基本書の弁です。共謀罪の新設については、それこそ、誰かが何かを企んでいる、共謀しているとしか思えません。
(コメントをくれたy.mさん、アザラシもいいけど、がんばれ取材と報道!)

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 一寸の虫に五寸釘のgo2cさんも「弁護士と利益相反」としてこの問題に触れられていますのでトラックバックさせてもらいました。

おわり

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