マンション管理会社~「ワンストップ・サービス」と利益相反~【松井】
*事務所からの眺め。左の建物は今秋完成予定の新大阪弁護士会会館ビル、右側は35階建ての超高層マンションです。なお、このマンションと本文とは一切関係がありません。念のため♪
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事件の関係などで、いくつかのマンション管理会社、その経営者の方などとお話をする機会がありました。
よく耳にするのは、「新築マンションに入居したとき、そのマンションの管理会社を選んだのは、入居している住人ではない」ということです。
事実としてよくありがちなのは、分譲マンションを建設、分譲販売した会社の関連会社がそのマンションの管理会社としてスタートしているケースです。
そしてこれは噂としてたまに耳にするのは、こういうケースのマンション管理会社においては、管理するマンションの大規模修繕工事や日常のメンテナンス費用について、相見積もりを取ったりすることは稀、あるいは相見積もりをしても、親会社的な工事会社の入札価額が、マンションの工事費用の積立金額と1円単位で一致しているという、出来レースもどきといったことがよく見受けられるとうことです。
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どういうことか。
「怒れ!1200万マンション住民―行政差別から生まれる法外な管理費 (単行本)」
市河 政彦 新世紀出版 (2005/12) という本が昨年暮れに出版されています。
分譲マンションの住人は、「法外な」種々の費用を支払っている可能性が高いにもかかわらず、「マンション管理」、特に、意外や金銭面にあまり関心がないということです。
「関心」は「監視」に繋がります。つまり、マンション管理に動くお金について関心が薄い、監視が弱いのが現状なんだろうと思います。もちろん、あからさまに管理組合の口座から個人名義の口座への振替えといった横領行為が行われるわけではありません。
聞くのは、前述の「法外な」費用・代金を支払うという形での、いわば管理組合が食い物にされるケースです。
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以前エントリーした「二つの鍵穴」も同様の問題意識です。無関心なのをいいことに、電気会社の変電設備のために敷地をタダで使われている、費用負担をさせられているのではないかということです。
分譲マンション住人は自分たちのお金のことなのにあまり関心がない。それはなぜか。 消費者被害事件によくありがちなのは、個人個人の被害金額は30万円~50万円というパターンです。これくらいの金額なら、訴訟だなんだとするのも時間、労力、費用がかかるので、何も行動を起こさない、いわゆる泣き寝入りパターンが多いのです。まあ、金持ち喧嘩せずという言葉もありますが。
マンション住人も同じで、日々、口座から引き落とされる「管理費」はせいぜい2万円前後です。
100戸のマンションで一戸2万円だったら、2万円×100戸=200万円、年間2400万円ものお金が集められて、費消されていることになるのですが、不思議なことに「1か月2万円」「年間24万円」だと何かあっても、「ま、いっか」という気持ちになります。これが構造だと思います。
4 「マンション管理 大阪ガス、関西トップ級に」
5月10日の日経新聞の記事にありました。
日経ネット関西版
【2006年5月9日】
大阪市系企業を買収──大ガス、マンション管理参入(5月9日)
「買収後、大ガスが新たに経営陣を送り込む。台所や風呂のリフォームなどの新業務も手掛け、ガス器具の普及も進める見通し。」
新聞記事によれば、「グループの総合力を生かし、幅広いサービスをワンストップで提供する」(大ガス)」らしいです。
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マンション管理はマンション管理組合、住人の利益のために働く(準)委任契約であって、善良な管理者としての注意義務が「住人に対して」あります。
大阪ガスの管理会社は、「ガス器具の普及も進める」ということですが、これは自社が管理するマンションに対してでしょうか?!
誰の利益を優先させているのかということです。住人よりも、ガスの親会社の利益をはかろうとしているとしか読めません。
はっきり言って、ごっつい利益相反なんではないのでしょうか。
こうしてまたマンション住人の利益がないがしろにされていくのでしょうか。
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そういえば、うちのマンションでも先日、全戸のガス漏れ報知器を交換するというので、個別契約ではなく、管理組合全体で契約して、全戸の報知器が交換されました。
この契約について、住人総会の場において、「交換する必要はないと思う人は、交換を拒むことはできないのか」と質問する方がいました。管理会社から出席していた担当者がこれに回答し、全戸で交換契約をすれば一戸あたり数千円安くなる、ぜひ全戸で契約をと住人をねじふせ、もとい、説明・説得していました。質問者もそれ以上は何もいいませんでした。
私自身も、なんか変だなと思いながら、まあ今回はいっかという風になってしまいました。難癖つけると後々やりとりが面倒だし、6000円程度のことだし、という抑制が働きました。
ただ、おそらく探知機の交換業者と管理会社との間で何らかのやりとりはあるんだろうなとは感じました。というか、マンション住人のことを思って管理会社が動いたわけではなさそうというのはよく実感できました。
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「弁護士と利益相反」というエントリーでふれた、遺産分割の場合と保険会社のケースの場合との違いは、弁護士が誰からお金をもらっているのかということです。
遺産分割の場合、依頼を受けた双方から着手金をいただきます。ある意味、公平です。しかし保険会社のケースの場合、保険会社からしか弁護士は費用を受け取りません。相談者から相談を受けた弁護士が、費用を払ってもらうわけではないものの利益のために、費用を払ってくれる側(保険会社)の不利益になることをするのかどうか、という疑惑があります。
これが似ているようで異なる点だと思います。
ちなみに、マンション管理会社は、管理組合から業務委託料の支払を受けます。にもかかわらずなぜに管理組合の不利なことをしうるのか。それは、単に、大金が集まるところに寄っていって、食い物にするという商売の発想があるときでしょう。
そうではなくて、本当にマンション管理組合、住人の利益のために働き、そこから正当かつ適性な費用の支払をうけ、それで利益を上げる、こういうモデルシステムが働かないと変わらないのかもしれません。
発想として、「工事」「リベート」でも儲けるという発想が出てくると駄目になるんだと思います。
おわり
追記
バック・マージンなどについては、~マンション管理組合の自立のために~というブログでマンション管理士さんが「不透明な取引体質」としてふれらていました。
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