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2006年4月14日 (金)

敗因分析~遺言無効確認の訴え~【松井】

 勝った。

 遺言無効確認の訴えの被告事件で先日、判決言渡しがあり、「原告の訴えはいずれも棄却する」との被告依頼者が全面勝訴という判決だった。
 兄弟である原告らが、この遺言は無効だと訴えてきた自筆遺言は無効ではないとされた。原告らの言い分には理由はないという判決だ。

 判決理由を基に、ひとまずざくっと原告らの敗因を分析してみる。

1 医学情報の検討の不十分
 どう見ても、原告よりも裁判所の方が、原告が提出したカルテ・看護記録をよく分析している。原告の主張に対して被告側が反論として主張、指摘した点について、原告は何ら応えていなかった。
 自己に有利な情報だけを見るのではなく、自己に不利な情報をいかにフォローするかということだろう。

2 大きなストーリー(物語)のなさ
 以前、裁判官がこう口にしていた。「弁護士が作った準備書面よりも、当事者名義で提出される『陳述書』を読む方が事件の大きな筋が見えて理解が深まる。やっぱり読み手には『物語』が必要だ。」
 過去10年ほどに遡り、幸いにして被告側は被告側の大きな流れの物語を語ることができた。要所要所に、被告側に不利な事柄があったが、そのような事柄が生まれる原因について、大きな一連の流れの延長線上で説明することができた。
 これに対して、原告側は、合理的なストーリーを展開できていなかった。
 遺言者は、なぜに孫を養子縁組し、そのことを原告らには告げていなかったのか。この事実それ自体が、原告らと遺言者の関係の希薄さを既に物語っている。
 全てはこれが始まりであり、原告らはこのことに対する有効な説明が出来なかった。
 原告らの説明に対し、判決書は、「原告の供述は信用できない」と述べた。


 「森のイスキア」の佐藤初女さんに手紙を出し、ご丁寧なお返事をいただいた。
 「神様は全てご存じなので必ず正しいお答えを出してくださいますが、聞こえてもこないし、みえません。でも神様に代わって伝えてくださる方がいます。」

 遺言者は、今回の判決を喜んでくれるだろうか。正しい答えが出ているだろうか。
 遺言者に尋ねない限り、真実は決して分からない。

 しかし裁判所の今回の判決は正しいと私は信じる。遺言者の生前の痕跡がこの答えを導きだしたのである。
 神様に代わって裁判官が正しい答えを出してくれたとは思わない。裁判官は神様ではない。法廷に提出された証拠にだけ基づき判断するにすぎない。
 正しい証拠が提出されても間違った答えを出す裁判官もいる。

 しかし私たちに出来ることは、神様を信じるように裁判官を信じること、正しい答えを出してくれると裁判制度を信じることなのだ。
 
 原告らは間違いなく大阪高等裁判所に控訴するであろう。勝っても喜んでばかりはいられない。高等裁判所の裁判官が正しい答えを出すものと信じて、弁護士の新たな訴訟活動が始まる。
 
おわり

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