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2006年2月

2006年2月26日 (日)

老後の財産管理 【松井】

1 
 先週2月21日火曜日、NHK大阪の「ぐるっと関西おひるまえ」という番組に出演させてもらいました。
 タレントさん、アナウンサーを間近に見ていつも思うのは、場をいかに見せるかということに関して、本当にプロの人たちだということです。その仕事に対する姿勢、能力に感動します。刑事裁判でももうすぐ裁判員制が導入されます。「人は見た目が9割」という新書本が出ていますが、何を話すのかではなく、いかに話すか、どのように話すかで印象・判断が決まるのではないかといわれ、弁護士会でもNHKのアナウンサーを呼び、話し方研修などが行われています。こういった方向性について良い面もあれば、悪い面もあるんだろうけど、テレビ業界という全く違う世界をかいま見ることは刺激になります。

2 
 で、何のために番組に出演したかというと「老後の財産管理」について語るためです。数年後には、4人に一人が65歳となるという日本です。単身、あるいは老夫婦で暮らすお年寄りがさらに増えることは明らかです。被害の実態として、お年寄りの方が悪徳訪問商法などの被害に遭いがちです。また、このような第三者でなくても、認知症を発症したりして、抗う気力等が低下していると、自身の子どもや親族などから預金や保険を解約され、お金を持って行かれる被害が多いという実態があります。悲しいことですが。
 そこで老後の財産を管理する、このような被害に遭わないためにどのような方策があるのかということを法的な視点が話をしてきました。
 
 一つは、各市町村にある社会福祉協議会という団体が行っている財産管理サービスの利用です。年間数千円で、通帳や権利証、印鑑などを保管してくれます。これで預かっておいてもらえれば、定期預金を解約しようというときでも、預かってくれる側が何か変だなと思ったら声をかけてもらえ、詐欺被害等に遭わずに済む可能性が増えます。
 もう一つは、弁護士などの資格ある専門家による財産管理サービスです。これも似たような制度があります。
 そしてもう一つは、平成12年に施行された制度、「任意後見制度」の利用です。これは意思能力に問題がないとき、予め、自分が認知症などを発症したときのために、誰に、何を頼むのかを決めておく制度です。番組ディレクターの方は、「財産管理のオーダーメイド・サービス」と表現しており、なるほどなあと思いました。万が一のときの保険のようなものです。
 任意後見制度ですと、不動産売却といった手続きまで依頼しておくことができます。自宅を処分し、専門施設への入所希望する場合などはこの制度の利用が望ましいといえます。

3 
 このような事前の対策をとっていなかったとき、どうなるかというと、例えば、田舎で一人暮らしをしている高齢の母が、詐欺被害に遭っていたという場合、被害を回復させるにはまず契約当時、お母さんの意思能力に問題があったということを立証しなければならなくなります。
 また、定期預金を解約して施設に入所する費用を用意しようと思っても、他人の財産ですから、勝手に解約して使ってしまうことは出来ません。母の同意があればいいのですが、意思能力に問題がある方の同意は効力が認められません。
 結局、成年後見の申立を家庭裁判所に行わなければならなくなります。この決定が認められるには早くて3か月ほどはかかります。
 こういった不都合を防ぐため、元気なうちにとれる対策をとっておきましょうという話しでした。


 これは遺言についてもいえることです。明らかに残された相続人の間で紛争が起こるであろうケースというものがあります。遺言で対策をと相談の際にアドバイスさせていただくのですが、弁護士費用を考えて躊躇されるようです。しかし、相続が起きてトラブルが起きてから弁護士を依頼した方がはっきりいって費用はかかります。着手金と共に報酬金の請求があるからです。しかし遺言作成の依頼であれば報酬金はかかりません。
 そういったことも説明させていただくのですが、やはり無形のものに対して10万円以上の費用を支払うということについては抵抗があるようです。残念ながら。
 従前、弁護士の新規登録者数は1000人程度でした。私たちのときは確か700人程度でした。それが今後、毎年2000人を超える弁護士が誕生することになります。
 価格競争が起こるのは目に見えていますが、安かろう悪かろうとなることのないことを祈っています。
 
5 
 話が脱線しましたが、「老後の財産管理 備えあれば憂いなし」といことで。思うに、日頃からご近所、親族などと円満なコミュニケーションを欠かさないことが本当の備えになるかと思います。
                                   おわり
 

2006年2月13日 (月)

「アンフェアなのは誰か」~情義的な保証人~【松井】

 「アンフェアなのは誰か」。
 アンフェアなのは、「情義的な保証人」を連れてこさせてお金を貸し付ける業者、かしら。

 1月から始まったフジテレビ系列の火曜夜のドラマ、「アンフェア」が結構、面白い。篠原涼子が主演のサスペンスもので、「アンフェアなのは誰か」が一つのキーワードになっている。
 これにひっかけて考えると、「連帯保証契約を締結する際における金融機関側の調査及び説明につき警鐘を与える事実認定に関する一事例」として(160頁、判タ2006.1.15)取り上げられた東京高裁平成17年8月10日判決は非常に興味深い判決です。
 「金融機関側、あんたがアンフェアなんだよ」と判決が言っているかのような判決です。

 平野裕之教授も大絶賛(100頁、同上)の判決であり、平野教授の解説を読み、私自身も改めて今までの自分の問題発見能力のなさを反省した次第です。

 判決はどのようなものかというと、「融資の時点で短期間に倒産に至る破綻状態にある債務者のために締結した連帯保証契約には動機の錯誤があり 債務者が破綻状態にないことを信じて連帯保証する旨の動機も表示されているとして連帯保証契約が要素の錯誤により無効とされた」ものでした(159頁、同上)。

 原告は、塗装業の会社に2500万円のお金を貸し付けた信用金庫であり、被告は、この会社の連帯保証人をした個人でした。
 この被告は、保証をした当時、71歳であり、資産は自宅の土地家屋のみといえる状態でした。この被告は、会社が金を借りるために、自分のこの土地家屋に信用金庫のために抵当権を設定し、自らも連帯保証人になっていました。
 金を借りた方の会社は、昭和47年創業で、二代目社長夫婦がしきっていた金属機械器具の塗装業を営んでいましたが、マツダ系列の下請けであったところ、系列関係がなくなり、受注量が減っていくとと同時に、あちこちから借り入れをして運転資金をまかなうようになり、平成10年には、「アルファ」「ペガサス」「クイック」「アコレ」「スターコーポレーション」「ハローリース」「日本プロジェクト」といったシステム金融からの借り入れが千万円を超える額になってしまいました。
 本来なら、そもそもの売り上げが見込めないのなら、この時点で会社を閉じてしまうべきだったのでしょう。
 しかし社長夫婦は起死回生を「中小企業金融安定化特別保証制度」の利用を考えました。
 金融機関の担当者は容易にこの状況を知り得る立場にあり、たとえ2500万円の融資を実行したところで、借入金の返済には追いつかず、早晩、破綻必至の状況であることは分かったはずでした。
 しかし、担当者は、連帯保証人と物的担保があれば金を貸せないこともないと言い、このため、社長夫婦は、奥さんの義理のお兄さんで、単身暮らしている被告に頼みに行きました。
 絶対に迷惑はかけない、土地建物に抵当権をつけさせてもらって連帯保証人になってくれたらお金が借りられる、その金があれば事業はやり直せる。
 義理の兄は何度か断った後、信用金庫の担当者とも会い、「大丈夫か」と訊いて、担当者は「大丈夫」と言ったというので、連帯保証人になり、自宅に抵当権を設定しました。 2500万円の融資は実行されました。
 融資から約4か月後、会社は二回目の手形不渡りを出し、倒産しました。

 本件判決は言います 
 「融資の時点で当該融資を受けても短期間に倒産に至るような破綻状態にある債務者のために、物的担保を提供したり連帯保証債務を負担しようとする者は存在しないと考えるのが経験則であるところ」
 「控訴人は、本件保証契約の締結の意思を確認された当時71歳の高齢で、子もなく2500万円支払能力はなかったのであるから、もし控訴人が訴外会社の経営状態について上記のような破綻状態にあり現実に保証債務の履行をしなければならない可能性が高いことを知っていたならば、唯一の土地建物を担保提供してまで保証する意思はなかったものと認めるのが相当である。」

 「およそ融資の時点で破綻状態にある債務者のために保証人になろうとする者は存在しないというべきであるから、保証契約の時点で主債務者がこのような意味での破綻状態にないことは、保証しようとする者の動機として、一般に、黙示的に表示されているものと解するのが相当である。
 加えて、控訴人は、何ら訴外会社と取引関係のない情義的な保証人であり、高齢かつ病弱で、担保提供した自宅が唯一の財産であるというのであり、このことは被控訴人においてその調査により認識していたものである。」

 裁判官の「経験則」!
 
 これが非常識だと、大橋の「マクガワン判決のおかしさ」に指摘されているのと同様、おかしな判決が世にあふれ出します。
 この東京高裁の判決の経験則は、読まれた方は何を当たり前のことに松井は驚いているのかとそのことに驚かれるかもしれません。
 私はこの判決を読み、目から鱗が落ちた思いでした。弁護士として経験を積むということは、ある意味、目に鱗が張り付いてくることなのかもしれません。
 この点、平野教授は鋭く指摘しています。
 「恐らく、これまで保証についての法律家の多くの理解は、『保証契約をすることは、保証債務を引き受けることであり、万が一の場合には支払いをしなければならないことを覚悟しているのであるから、主債務者が支払えず保証人が支払わされることになっても、保証人は文句を言えない』、といったものであったといえよう。」(100頁、同上)。
 まさにそのとおりであり、この判例の当事者の方から相談を受けたとしたら、裁判をしてもまず勝ち目はないですよといった説明をしていたことだろうと思う。
 しかし、しかし、しかし、しかし。
 よく考えてみよう!「義理人情により仕方なく行われる社会生活における助け合いの精神に基づく情義的保証を、債務者自身による抵当権の設定と同視したり、取引法原理で律するのは、誰もが直感的におかしいと感じるはずである。主債務者を利用して義理人情で断れない保証人を獲得し、これに自分が本来負うはずの債権回収のリスクを転嫁する債権者を、勤勉な債権者として無条件に保護し、取引とは異質な無償行為(契約の相手方である債権者のためではなく主債務者のため)をした保証人に、軽率であっても契約は契約だといって諦めさせるが、社会通念に合致するかは疑問である。」

 仰るとおりです。
 まさにアンフェアな取引きなんだろうと思う。東京高裁の判例は、この当たり前の感覚、「おかしい」という違和感を見事に判決に反映させたものだと思います。
 法律はおいておいて、「なんかちょっと変じゃないの!?」という違和感を感じる能力を失わず、大切にしていこうと改めて思いました。理屈は後からついてくる、といったら言い過ぎかもしれないけど。
 
 ところで。ネット銀行の「ソニー銀行」の企業理念を見たことはありますか?

 「フェア」です。
 
 ソニー銀行の役員には、元山一証券の方や三菱銀行の行員さんが確か就いているはずで、うがった見方をすれば、あえて「フェア」を前面に出すからには、「アンフェア」なこともいっぱいある業界だったんだろうなということです。

 最後に。平野教授の提言。
 「このような情義的保証という非近代的な担保方式は、理想としては保険や法人による合理的な保証にとって代わられるべきである。解釈論としても、取引法理とは異なり保証人保護のために、取引を念頭においた法理を修正して運用がされるべきである。」(105頁、同上)。

 

2006年2月 5日 (日)

遺言無効確認請求事件の研究(上)(判例タイムズ’06・1/15号)【松井】


 先週、裁判所を出たところで、障害者学生無年金訴訟の敗訴判決についてのビラを原告・支援者の方から受け取りました。
裁判所の判決に対して、「不当判決」といった言葉を聞く度に思い出すのは、次の出来事です。
 司法試験合格後、修習に入る前、裁判官の方と話す機会がありました。どういう話の流れだったかは忘れましたが、その裁判官が言うには、判決を出した後、「違法判決」と言われると困るけど、「不当判決」と言われるのはある意味、仕方ないといったことでした。敗訴した方は納得していないので、判決のことを「不当」と称するのはある意味、当然のことだろうといった意味だったように思います。
 「違法」と「不当」。違法じゃなければそれでいい、「不当」と誹られようが構わないという趣旨ではもちろんないとは思いますが。


 月2回発行されている判例雑誌、判例タイムズの今年の1月15日号では、大阪地方裁判所の若手裁判官ら10名による「遺言無効確認請求事件の研究(上)」が掲載されていました。

 過去の遺言無効確認請求事件を研究した結果の報告です。
 なぜまたこの時期にこのような研究、発表になったかというと、もちろん、
「当該遺言によって不利益を受ける相続人ら原告となり、当該遺言によって利益を受ける相続人らが被告となる遺言無効確認請求事件もまた増加することが容易に予想できる。」(43頁)からです。

 1月、関西の地元情報テレビ番組に出演させてもらい、「遺言と相続」について話をさせてもらいましたが、本当に世間の人に一番言いたかったことは次のことです。

 「遺言を作るなら、弁護士に支払う費用がかかっても、弁護士に相談してください。」

 ということです。ちまたのネット社会では、弁護士以外でも遺言・相続相談に応じる旨が広告されています。内容は確かに充実しているし、資格を持たれた方が費用をとって相談に応じる以上、間違ったアドバイスなどはしていないかもしれません。

 遺言無効確認請求事件の訴訟代理人を経験する弁護士として強調したいことは、遺言というのは単に作ればいいというものではないということです。
 亡くなってから、相続人らの間で無効確認請求訴訟が起こされるなんて、何のために遺言を作ったのか分かりません。かえって紛争を一つ余計に増やしただけのことになってしまうのです。遺産分割協議だけで済んだのが、へたな遺言があったばかりに無効確認の訴えが起こってしまう、無効になったら、ここから遺産分割協議です。

 遺言を作るにあたっては、後日、無効とされないように、また内容面で解釈等について余計な紛争が起こることのないように確実に準備をせねばなりません。
 例えていうなら、契約交渉をふまえ、ありとあらゆる場面を想定して、対策を考え、契約書の文言を練り上げる作業ともいえます。

 書店のあんちょこ本をちょろっと見て勉強して本当に完璧に遺言書が作れるのなら、遺言無効確認請求事件なんて起きません。
 しかし、裁判所は、今後、遺言無効確認請求事件が「増加することが容易に予想できる。」と言い切っているのです。

 弁護士・法律事務所はやはり行きづらい、敷居が高いのでしょうか。
 費用をふんだくれられるんじゃないかといった不安もあるのでしょうか。
 最初の相談は時間制での費用請求ですし、昔は紹介者のいない方からの相談はお断りしている事務所が多かったようですが、現在はうちのようにホームページを持ち、ネットからの相談予約も受け付けているようなところも増えています。

 裁判で争われることのないよう、紛争予防のためには、裁判のプロの弁護士を活用して欲しいと思います。
 本当は、これをテレビで言いたかったです。

 テレビ番組での相続の紛争再現VTRとそのコメントでは、行政書士の方が相続のプロとしてコメントされていて、正直なところ不思議な気がしました。でも、あれは私のところへ出演の話しが来る前に、番組製作の方がすでに行政書士さんから相続問題の取材、撮影をしていたので、私が、「相続人が増える事例は、いったん起こった相続について協議をきちんとしないままにしていて、その間にまた相続が起こってしまったような場合がほとんどですよ」、あるいは、「筆跡鑑定って裁判ではそれほど信用性は確立していませんよ」などと水を差すことはできませんでした。番組製作の方もなぜ最初に弁護士に取材に行かないのか、不思議でした。敷居が高い?!



 さて。遺言無効確認請求事件において、「当該遺言が無効であるか否かについて判断するためには、遺言者の遺言時における精神上の障害の有無、内容、程度といった医学上の評価から、遺言者の遺言時の年齢、遺言時及びその前後の状況、遺言をするに至る経緯、遺言の内容、遺言の効果等までを子細に検討する必要があり、裁判所は困難な事実認定をせまられる。」とあります(44頁、前記)。「しかも、当事者の関係は良好でないことが多く、争点とは必ずしも関連しない事実をめぐって当事者が激しく対立する場面も見受けられる」(同上)とあります。

 メモ用に以下、項目だけ、上記研究報告から引用しておきます。

事実認定上の問題点
1 遺言書の成立要件
   自筆証書遺言
    作成者が争点となった裁判例
     遺言の内容
      以前にした遺言の内容との整合性
      遺言者の従前の発言・意向との整合性
      遺言者と相続人との関係との整合性
      遺言の目的である財産内容との整合性
      その他
     筆跡の類似性
     筆跡の特徴
     自書能力
     作成可能性、偽造可能性
     遺言者の言動、被告の言動
     遺言書発見の経緯
    遺言書が判読できないことが争点となった裁判例
    作成日付の誤記が争点となった裁判例
    遺言書の加除その他の変更方法が争点となった裁判例
    遺言書への署名押印方法が争点となった裁判例
    共同遺言であることが争点となった裁判例

   公正証書遺言
    証人の立会が争点となった裁判例
    口述が争点となった裁判例
     口述の不存在が争点
     遺言書又は原案が口述以前に作成されていた場合
     遺言者が受動的に応答したにすぎない場合
    読み聞かせ、承認が争点となった裁判例
    署名が争点となった裁判例
    公正証書の作成状況を認定するに当たっての証拠方法

2 遺言内容の確定

以上

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