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2006年1月29日 (日)

Service from the Heart【松井】

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 所属する大阪弁護士会にはいろいろな委員会というものがあります。私は、弁護士1年目から消費者保護委員会というものに所属しています。
 弁護士1年目の年、モニター商法の先駆けであった「ダンシング」という布団屋が倒産しました。これは、月々のクレジットの支払い額を超えるモニター料が支払われるからと知人などから懇請を受け、40万円!という布団購入のためクレジット契約を結んだけど、ダンシングが潰れたため、残るはクレジット会社への負債だけになったというものです。
 ダンシングのモニター商法は破産必至の商法でした。会社はクレジット会社からの一括立替金を手に入れるだけ手に入れて、潰れました。
 残された被害者のため、クレジット会社に対峙すべく、消費者委員会に所属する弁護士が中心となって弁護団が結成されました。私もこのダンシング被害弁護団の一員でした

 会社が潰れてクレジットの負債だけが残るという同じような状況は、確か翌年おこったエステ・デ・ミロードというエステ会社の破産の際も多数の顧客が同じ状況におかれ、大阪弁護士会で被害者説明会が開かれ、消費者委員会の一員として出席しました。このときは、クレジット会社には「抗弁の接続」というもので支払いをストップして対抗できますよというアドバイスが主でした。その後、エステ業界の信用維持のため、他の会社が特別にサービス提供を引き続いて行うということになりました。

 先日、我ながら何を思ったのか、百貨店内にある美容エステ店から「1月限定トリートメント」通常の半額!というダイレクトメールを見て、気分転換に一度、行ってみようと初めて顔のエステとやらを受けてみました。

 最初、黒幕で覆ったボックスの中の鏡を見るように言われ、のぞき込んでみると、青い光を浴びて、顔面一面、黒いシミが広がり、鼻筋にはポツポツと白く光る点々が並んでいました。
 これは顔の肌の奥を見る機械だそうで、黒いシミは放っておくとやがて顔の表面にそのまま浮き出てくるということでした。白い光は皮脂が詰まっているところだということでした。
 ふーん、と思って、いざ施術室へ。

 ベッドに横たわり、マッサージが始まると、エステシャンの20代の若い女の子は、こうい言いました。
「先ほど、皮脂が詰まっているは見ましたよね。今日のトリートメントには皮脂の除去は含まれていないんです。でもこれを除去しないと、今日のクリームなどが肌の奥に届かないんですね。皮脂を除去するには2500円追加になるんですけど、皮脂を除去されますか。」

 横たわる前に言うべきでしょ!黒い箱をのぞき込んだときに言うべきことを、横たわり、すっかりその気になっている状況で追加費用がかかるサービスを提案する、この三流セールスぶり。呆れてしまいました。ここで気が弱い人は、ついつい、
「あ、じゃあ、皮脂の除去もお願いします。」と言ってしまうんでしょう。

「今日は要りません」とすかさず言いました。

 その後約1時間、エステシャンはとりとめもない話を話しかけてくるので、適当に話を合わ、施術は終了しました。

 着替えて、支払いを終えてさっさと帰ろうとすると、支払いの前に肌の説明をするというので、何を話すのかと聞いてみることにし、テーブルに着きました。

 彼女は白い紙を前にして、肌の正常な活動パターンとトラブルを抱えたパターンといことで図を描き始めました。
 結論としては、皮脂など詰まった老廃物を除去し、毛細血管を活性化させるのがきれいなお肌を得るには必要ということでした。

 そして、私の肌の現状は、今日はイオン導入、マッサージ、クリーム等の手入れを受けているので活性化しているが、皮脂除去が出来ていない、活性化は単発では意味がない、肌はこのままでは右肩下がりだという折れ線グラフを描いての説明になりはじめました。

 これがクレジットの多重債務を抱える人がよく言う「断れなかった」「無理に勧められた」「脅された」という、強迫セールストークかと、呆れました。

 要は、やはり単発のダイレクトメール、チラシなどで誘い込み、来店したその日のうちに次の継続的な10万円以上の契約を結ばせる、あるいは高額の化粧品を買わせるという、三流商法です。

 私がこのエステ店の経営者なら従業員には、決して、このようなセールストークをするなと指導しましす。
 お肌の構造、お客様の現状は、丁寧に説明したうえで、なぜこのような状況になっているのか、お金がかからずに家ではどのような手入れをすればいいのかをアドバイスするように言います。
 お客さんのことを考えれば、関心があるのは普段、家でどうすればよかったのか、何が悪かったのかということです。

 ここの説明をすっとばして、とにかくこの店に来い、来たら大丈夫なんだよ!という態度では、店の誠意は全く感じません。
 言い過ぎかもしれないけど、構造欠陥のマンションでも、安く手に入ればいいだろ、売ってやるよ、売ってしまえば同じだよという企業姿勢と同じです。

 本当に客の肌のことを考えているのではないくせに、まるで心配しているかのように接するその底の浅さが三流商法だと驚いたのです。
 
 「今日は、どんなものかと一回来てみただけなので」と言って、さっさと帰りました。 最後、エステシャンの顔色は明らかに暗く変わっていました。

 
 以前、大先輩の弁護士が言っていました。仕事をするとき何を考えるか。「いかに依頼者の方がお金を使わずに済むのかを考える。」と言ったことを口にしていました。
 
 この日の晩、航空会社に勤めていた方からたまたま聞いた言葉。
 
 「Service from the Heart」

 フライト前の会議のとき、会社の上司が毎回毎回、口をすっぱくして言っていた言葉だそうです。サービスにマニュアルはない、お客様にどのように接すればいいのかは、それは気持ちから自ずと出てくるということだそうです。

 レストラン、ホテルなどでも一流といわれるところは確かに値段は高いです。しかし、その従業員は皆、優れたコミュニケーション能力を持っています。単に、食事をする、泊まるという最低限のサービス以外の心地よさを与えてくれます。
 それはひとえに、心からのサービスによる言動が与えてくれる満足感なのだろうと思います。
 一流と三流の違いを知ることは大変勉強になりました。
 
 にしても、百貨店幻想か、まさか百貨店内の店でこんな三流サービスを受けるとは驚きました!このエステ店は百貨店内に店を開くことで店舗展開しているそうです・・・。まぁ、この店舗展開も消費者の百貨店幻想を利用しているのだとは思いますが、従業員教育が必要だし、まあ、そのうち淘汰されていくでしょう。

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