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2005年7月28日 (木)

裁判所からの帰り道、馬に乗った天狗に出会う ~訴訟代理人は何を売っているのだろうか~【松井】

CIMG0818
午後5時30分、裁判所から事務所へと戻る帰り道、中之島の公会堂の前で馬に跨る天狗を見かけた。
7月25日。今日は、大阪の一大祭、天神祭の日だ。
その馬に乗った天狗が何を表すものなのかは知らない。
でも、その日、6か月以上もかけて行われていた和解交渉が決裂した裁判での帰り道、非日常に遭遇して、ちょっと疲れていた気持ちが回復したようだった。

和解。
民法695条
和解は当事者が互いに譲歩をなしてその間に存する争いを止むることを約するによりてその効力を生ず。

「互いに譲歩」することを、「互譲」(ごじょう)といっている。
互いに主張を譲り合って、紛争を終わらせるということだ。
白黒を争っていたことについて、白黒をつけずに灰色で終わらせる。紛争の終了を優先させるためだ。
紛争を終わらせるということを双方の最優先目的とし、その他のそれまでの要求等については妥協するということだ。
紛争の終局的な解決。これが双方の利害の一致点だ。

しかし、どこまで妥協するのかということで折り合いがつかないことがある。
裁判関係者は皆、紛争の終局的な解決を望む、だからこそ和解のテーブルの席につく。そして条件交渉を行う。
しかし、決裂するときは決裂する。
そして、争いは続く。

一審地方裁判所、高等裁判所、そして最高裁判所。
これで終わればまだいいほうだ。
最高裁判所で結論が出ても、紛争の火種が消えていない限り、新たな請求を立てて提訴する。
そしてまた同じ顔ぶれで争いが続く。第二幕のスタートだ。


弁護士に支払われる費用が、時間制・タイムチャージであったなら、紛争が長引けば長引くほど、弁護士費用が膨大になり軍資金が底をついて、そのためやむを得ず和解で終わることがあるだろう。アメリカなどは、そういうことがあると聞く。弁護士への支払いがおおよそタイムチャージだからだ。
日本では、法律相談は時間制であり、これは最低でも、1時間、1万0500円だ。
裁判において弁護士が時間制で費用を請求したら、普通の人どうしの一般的な争いであっても、100万円は軽く超えるだろう。

例えば、判決までに裁判期日が10回あったとしたら、
提訴準備のために、依頼者との打ち合わせ10時間、調査・書類作成20時間、
合計30時間。

裁判所での出頭時間、1回30分、うち最終回は尋問期日であり、取り調べ3人としても3時間、合計7時間30分(30分×9回+3時間)、移動時間を往復約20分として(20分×10回=3時間20分)、
合計約11時間。

毎回期日前の依頼者との打ち合わせ時間、
平均4時間として、4時間×9回、
合計36時間。

毎回期日前の弁護士の準備時間(判例・文献等検討、書類作成等)、
平均15時間として、15時間×9回、
合計135時間。

また、尋問前の打ち合わせ、準備、
平均20時間。

その他、現場見分、関係者からの事情聴取などがあれば、
おおよそ10時間。

以上のように見積もっても、
提訴から判決期日までに、合計242時間。
時間制で、最低の一時間1万0500円としても、
200万円を軽く超える。
しかも裁判期日が10回、尋問3人とした場合の一審段階のおおよそであって、
これ以上の期日、さらには上訴審となればさらに加算。

とても裁判で争いを続けるなんて気にならなくなるだろう。
和解で終わらせようという気にもなるというものだ。

そのような裁判のあり方が果たして、いいのか悪いのか。なんとも言えない。


再建中のダイエーの現経営者、林文子さんの「失礼ながら、その売り方ではモノは売れません」を買って、斜め読みした。

訴訟代理人の依頼を受けた弁護士は、何を売っているのだろうかとふと考えた。

判決となれば、白黒がつく。勝ち負けだ。
時間制での契約でなければ、負けた方の代理人は報酬請求をすることはない。
当初、依頼を受けた段階での着手金だけだ。
その判決が出るまでにどれほどの時間を費やそうが、依頼者が負けとなる判決が出ればそれで終わりだ。
だから弁護士は、勝てないと判断する事件については、そのことを相談者に説明し、依頼を断ることがある。
あるいは、説明したうえで、それでも依頼をとなると高めの着手金を提示するといったこともある。
負けてもいいから争ってみてくれとなると、弁護士って、依頼者のただの駒の一つにすぎなくなる。試合のための必要な道具だ。

弁護士は、自分の専門知識、能力について切り売りしているだけなのだろうか。訴訟のかたちを作るための。


依頼者を説得できずに、和解が決裂したとき、無力感を感じる。タイムチャージだったら和解したんじゃないかなどと想像してみたりして、裁判所からの帰り道、馬に跨った天狗をみて、気持ちを持ち直して事務所に戻った。
CIMG0812


事務所のホームページでも述べているが、ドラえもんの平和アンテナとして、紛争がない社会に貢献できればと考え仕事をしている。紛争が起こらないよう努め、起こった紛争は解決する、つまり紛争を終わらせたいと願っている。
依頼者と別れるときは、これで終わりましたねと笑顔で別れるのが一番だ。
それが出来ないとき、ちょっと辛い。

まわりくどいことを書いていますが、敗訴判決が出ると判断できるとき、和解で終わらせるのがもっとも依頼者の利益確保につながるのですが、分かっていて和解を蹴ってしまうとき、判決が出てもこれは新たな紛争の序曲にすぎないので、依頼者と笑って別れることはできない、それが気持ちを暗くさせるんです。
依頼者は、説明をよく理解してくれながらも、それでも敢えて紛争継続の途を選ぶことがあるのです。代理人として無力さを感じずにはいられません。
ただ、最後はこう言います。
「私は弁護士で、代理人です。代理人にすぎません。本人は、あなたです。この裁判の結果は、代理人ではなく、本人に及びます。だから、最後、この裁判をどうするかは、ご本人が決断してください。私は決断のためのアドバイス、見通しの説明はしますし、意見もいいますが、それでも最後を決断するのはあなたです。」
CIMG0820

結果を背負い、紛争を続けていくのは依頼者です。
それでいいのか、でも仕方ない、代理人にすぎないから。

川を渡り、事務所に戻った。

*写真、左から二つ目の建物、最上階の部屋が事務所です。
 この窓から時々ぼんやりと下の川を眺めます。
 以前、一度だけ、お椀に乗って棒でこいで川を流れていく一寸法師のまねごとをしている人を見かけました。何かの撮影だったのでしょうか。お椀ではうまく漕げずに、くるくると回っていました。
 

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