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2005年3月23日 (水)

鈴木亜美を見て思う、契約というものについて【松井】

CIMG0603最近、テレビで鈴木亜美をよくみかけると思ったら、浜崎あゆみも所属するエイベックスに今年から所属していたらしい。
歌やその存在が好きかどうかはともかく、がんばって欲しいと思わずにはいられない。

テレビのオーディション番組から登場し、当時絶好調だった小室哲哉プロデュースということでデビューし、あっという間にテレビの人気者になった歌手だ。確かデビュー当時まだ17歳だったか18歳。
ところが1、2年後、突然、テレビから姿を消した。

所属した事務所との契約を巡るトラブルが原因~働きまくっているのに相応のギャラが支払われないから辞める~と言われていた。その後もれ聞く話では、所属したレコード会社との契約解消も求めているということだった。
そして鈴木あみは世間から消えた、ように思われた。

その後、所属事務所とは裁判になっているということであったが、鈴木亜美勝訴、事務所は辞めることが出来た(平成13年7月)。しかしレコード会社とも裁判となり、この判決が出たのが平成15年3月だった(判例時報1836号89頁)。

所属事務所とは「マネジメント契約」(1)の解除を争い、レコード会社とは、マネジメント契約がなくなったことに伴い、同社との「専属実演家契約」(2)もなくなったと争ったものだった。

判決による、鈴木亜美の主張、レコード会社の主張がそれぞれ興味深い。
判例雑誌に紹介されている趣旨としては、鈴木亜美ーマネジメント会社ーレコード会社という三者間の契約関係についての判決の考察の仕方が見るに値するものとして紹介されている。

しかし私にとっては、レコード会社のビジネスのあり方について今更ながらになるほどねぇという感心、さらには「考え抜いて契約書を作る」ということの大切さを改めて実感した判決文だった。


原告の主張では、こんな主張事実があったようだ。

「本件専属契約第3条第1項の定めるとおり、原告がいかなる歌を歌唱するかは被告ソニー・エンタテイメントと原告とが協議すべきことであるところ、同被告は、そのような協議を一切せず、実際には、レコーディングの当日に原告に楽譜を見せて、その場でレコーディングをするということが行われていた。また、楽曲によっては、原告の音域に合わないものもあった。」
鈴木あみ、大変だったのね、というところか。


マネジメント契約が終われば当然に専属実演家契約も終わるわけではないというレコード会社の主張では、こんな主張があったようだ。

「レコード会社が契約したアーティストは、レコード会社が投資したからといって誰しもが成功するわけではない。したがって、レコード会社は、多くのアーティストと契約し、かつ、その中の一部のアーティストによってもたらされた利益が他の多くのアーティストに投資され、その中から次代を担うアーティストが生まれ、またその利益が他のアーティストに投資されるという繰り返しによる収益構造が、レコード会社のビジネスの基盤となっている。よって、成功して収益をもたらすようになった一部のアーティストについて、その専属性が予定どおり保持されなければ、レコード会社の収益構造が成り立たなくなってしまう。」
なるほどねぇ、といったところか。
「数撃ちゃ当たる方式」あるいは「リスクの分散」ということよね、結局。
オレンジレンジの成功による利益で、また新しい才能が発掘されるわけですね。


契約条項の重要性については、判決書は次のように述べて、レコード会社に対して厳しいものとなっている。
結局、レコード会社の主張は受け入れられず、マネジメント契約がなくななれば、原則、専属実演家契約もなくなると裁判所は判断した。

「本件マネジメント契約の終了により本件専属契約が終了すると解さざるを得ない理由は、本件専属契約が存続するとした場合、契約の双務性と有償性とが失われ、原告が一方的な債務負担のみを強いられることになり、著しい不利益が生ずるということ、及び本件専属契約が二者契約に変容するとした場合の被告ソニー・エンタテイメントと原告との間の法律関係を本件専属契約の条項から導き出すことができないことにある。そして、このことと、本件専属契約の条項から一見して、本件専属契約が本件マネジメント契約を前提としていることを十分に知りうるはずであることからすれば、同被告としては、本件マネジメント契約終了後の法律関係について、あらかじめ合理的な規定を設けておくなどして、契約関係を明確化し、かつ、原告に著しい不利益が生じないように配慮しておけば、本件マネジメント契約の終了によって本件専属契約が終了するという不利益を避けることができ、かつ、同被告があくまでも専属性を重視するのであれば、そうすべきであったということができる。したがって、本件専属契約の終了によって被告らの被る不利益のみを重視することは、相当ではないというべきである。」

厳しい!もし私がこの専属実演家契約の契約書を起案した弁護士だったら衝撃のあまり失神してしまうかもしれない裁判所からの指摘です。
要は、契約書の条項が曖昧だから、その不利益をあなたが被ってもそれはあなたの責任よと突き放しているのです。
契約書を起案する弁護士としては、先の先の先を考え、まさに「契約関係を明確化」し、一方当事者に極端に不利益とならない契約をなすように努力しなければならないということでしょう。単に、書いてあればよいという程度のものじゃ裁判では戦えないよというあたりまえのことですが。

いま、レコード会社と実演家との契約書のひな形はどうなっているのか興味のあるところです。


テレビで鈴木亜美を見ると、この判決を思い出します。がんばってね、鈴木亜美。
ちなみに、この判決のあと、控訴審で鈴木亜美とレコード会社は和解したようです。これで契約関係がすっきりし、エイベックスとも契約できたんでしょうね。


*写真は、MCUという人とBOOMの宮沢和史で、「ありがとう」という歌のPVの一幕で、夜中やっていたMTVで流れていました。

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