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10 つれづれ

2008年10月29日 (水)

頑張る経営者の方への想い【松井】

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 よくブログで書くように、実家は有限会社でハンコ屋さんをやっています。
 祖父が始め、5人兄弟の長男であった父が二代目となり、兄が三代目となります。

 小さい頃、税務署の職員が調査に来たといって、母が、「凄い、帳簿からこんな小さな数字まで拾っていった。5年遡って払わなあかんらしい。」といったことを口にしながら、店舗兼自宅だった家が騒がしかったことを覚えています。
 取引先の倒産、従業員の同士のトラブル、あるいはお客さんから苦情の対応、さらには借入、その借金の返済などなど、否が応でも目に入り、耳に聞こえていました。母曰く、「うちらのような小さい自営業者は借金があって当たり前、借金があるから返済しないといけないと張りが出て、それでがんばって働こうという気になるのだ。」と。「従業員の人は大切にしないといけない。自分たち家族だけではお店はできないんだから。気は心だ。」といって、何かと渡しものしたり。さらには、「自営業はいいよ。やったらやっただけ金銭で評価を受ける。会社の従業員だったら、どれだけがんばっても決まった給与額しかもらえない。自営業の方がやりがいがある。」と母曰く。
 借金の話は、子ども心に「ほんまかいな。借金なんてないほうがいいに決まってるんちゃうん。」と懐疑的だったことを思い出します。


 朝早くから、夜は遅くまで、母は、外回りの営業、配達、ショッピングセンターに出店した店舗の店番の交代、家に帰って来てからは家事に、さらにはまたゴム印の柄付け、帳簿作成といった仕事をしていました。
 父はというと、こちらはまさに職人で、朝から夕方まで、「本店」と言われた店舗兼住宅の店舗部分で、黙々とハンコを彫っていました。で、夜になると「会合」といって飲み歩いていた記憶があります。行った先の雀荘に、母に言われて、電話を架けさせられたりした記憶もあります。そして休みの日には、ひたすらゴルフ。夜も、打ちっぱなし場へ出かける日々。
 まさに、典型的な家族経営の会社。夫は仕事と遊びに精を出し、妻はひたすら働く、といったところでしょうか。


 たぶん、意識していなくても、小さいころ、親のこうした働きぶりを見ていたせいか、自分で仕事をもって奮闘している人、自営業者、中小の会社の経営者の方にお会いすると、「頑張って欲しい、成功して欲しい」という思いが募ります。
 しがない弁護士、町医者ならぬ町弁ですが、何かお役にたてることがあれば最大限のことをしたい、サポートしたいという想いが募ります。
 経営が順調になるまでには、売掛金の回収や、事務所、店舗の賃貸契約のトラブル、あるいは従業員との雇用契約上のトラブル、あるいは顧客とのトラブルといったいろいろなトラブルの発生が考えられます。
 
 法的な知識と作るべき契約書等があれば、たとえトラブルが発生したとしても、紛争の拡大を抑えることができることが多いかと思います。
 ルーティンなところは事前に整備し、マニュアル、書式などを用意し、経営者が経営者として本来、注力しないといいけないところに注力できる環境を作り、本来の事業で安定した成功を収めてほしいと、がんばっている方々をみると思います。


 実家でも、先日、いつも割り引いてもらっていた手形の割引を金融機関に断られた、当てにしていたのにどうしたもんか、という相談がありました。
 支払を手形で受け取るということはどういうリスクがあるのか、手形の流通の現状はどんなもんか、新たな取引先と取引する際の注意点などを母に説明しました。
 母がどこまで分かっているかは分かりません。
 兄がどこまで分かっているかも分かりません。
 うちの実家の会社には、顧問の会計事務所はありますが、顧問の弁護士なんて頼んでいません。

 たぶん多くの自営業者、中小企業は、そうだと思います。
 何かトラブルがあったときに、弁護士に相談しようなんて発想はないんだろなと。
 相談した知り合いから、弁護士を紹介され、弁護士に相談するという選択肢があるという機会がない限り。
 多くは税理士さんに相談し、税理士さんからアドバイスを受けているのだと思います。法的な事柄についても。
 それでうまくいっているならそれでOKだと思います。
 税理士さんに顧問料を支払い、さらには月に1件相談があるかないか分からない弁護士と顧問契約をして顧問料を払うことはないかと思います。


 ただ、自営業者の方や、中小企業の経営者の方などに知っておいてもらいたいのは、経営上のトラブルについて、税理士さんだけではなく、ぜひ、どこかで探すなり、つてを頼るなりして、弁護士に相談して欲しい、その価値はあるということです。
 税理士さんの視点、知識、情報と、弁護士の視点、知識、情報は当然のことながら、レベルというか種類が全く違います。良い、悪いではなくて、単に違います。
 弁護士は、税法の通達なんて知りません。チェックしたりしません。
 税理士さんは、会社法、民法は知っていたとしても、訴訟の場合の裁判官の考え方、立証責任、要件事実について、たぶん知りません。チェックしたりしません。
 そういうことです。
 
 いろいろご縁があって、顧問契約といったことこそしていないものの、何かあると気軽に電話をしてきてれくて相談してくれる経営者の方がいます。もちろん仕事なので無報酬ではありませんが、相談ごと、時間制のフィーを請求させてもらっています。
 頼られると、頑張って応援したくなる。
 そんなものかと思います。
 顧問をつとめさせてもらっている会社では、新しい分野で、法整備、法解釈もままならず、関係省庁に一緒に出向いたりして、まさに一緒に道を切り開いているといったところもあります。そこの会社とのご縁は、私が弁護士1年目のとき、交通事故事件を担当し、その事故車を修理した修理工さんとして出会ったというものでした。その方が数年後、会社を興し、こういう事業をするのだけど力を貸して欲しいと請われ、以前助けてもらったご恩とご縁もあり、では今度は私の番かと、その会社の方々の事業への想いにも共感し、私自身も試行錯誤で活動させてもらっています。
 頑張られている姿を見るから、私も自分が出来ることを頑張ろう、役に立とう思います。

 頑張って欲しいです。
 山あり谷ありで、次から次へといろいろな難題がふりかかってきますが、頑張っている方の成功を目にするまでは応援していきたい、支援していきたいと思っています。
 真面目に、創意工夫をもって地道に商売をしていれば、得難いチャンスも入ってきます。
 それをぜひものにしてください。
 過去のトラブルは笑い話になるほどに成功してもらいたいと思います。

 カナディアン・メープルシロップ、買います! Oさん、頑張ってください!
 べトナムと日本との架け橋、頑張ってください、A社の皆さん!

 ほかにも、自ら奮闘、頑張っている方々、頑張ってください! 
 応援しています!!
 紛争解決、紛争予防に勤め、その方々が本来、注力すべき事柄に注力できるように。
 それが弁護士の使命の一つではないかと思っています。
(おわり)

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2008年2月20日 (水)

東京税関成田税関支署長vs.ロバート=メイプルソープの写真集【松井】

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 平成20年2月19日、出版社の社長が、99年9月21日、国内に持ち込もうとしたロバート=メイプルソープ氏の写真集に対して、税関支署長がなした輸入禁制品に該当する旨の通知に対し、違法であるとして、取消しを求め、さらには国に対して慰謝料等の支払を求めたい裁判の最高裁判決が出ました。
 最高裁のHPにももう全文がアップされています。


 結論は、既に報道のとおり、関税定率法そのものの合憲性を認めたうえで、本件の写真集は同法21条1項4号にいう「風俗を害すべき書籍、図画」等に該当するものとは認められないとして、処分取消しの請求を認めまたした。
 ただ、一方で、国については、「本件通知処分をしたことが職務上通常尽くすべき注意義務を怠ったものということはできない。」として慰謝料の請求は認めませんでした。



 判決は5名の最高裁裁判官によってなされました。結論は、5名の全員一致ではありませんでした。堀籠幸男裁判官の反対意見が付されています。
 本件判決は、問題とされた写真と同じものが印刷され、わいせいつ性ありとされた、最高裁平成11年2月2月23日第三小法廷判決を変更するものではないことを敢えて本文で述べています。
 これに対し、堀籠幸男裁判官はその反対意見で、上記判決と本判決の結論では「整合性を保ち得ず」また、その点について「合理的理由もない」と結論づけています。
 


 今回の最高裁判決が、従前のわいせつ性に関する判断基準を変更したものではないとあくまでいうのであれば、堀籠裁判官が指摘するように「性器そのものを強調し、性器の描写に重きが置かれているとみざるを得ない写真」は、「それだけでわいせつ物である」と判断される点、何ら変わってはいないことになります。

 前のブログでも指摘したように、私が、大橋仁さんの写真集「いま」を持って海外に出かけ、また日本に持ち帰ったとしたら、出産場面でまさに女性性器から子どもが誕生する場面が写された写真は「わいせいつ物」とされて、税関から輸入禁止の通知を受けそうです。

 私は長島有里枝さんの写真集「not six」も持っています。「ろく でなし」、とされる若い夫、夫との日常生活の写真を集めた写真集です。
 「性器そのものを強調し、性器の描写に重きが置かれているとみざるを得ない写真」が何点か収録されています。
 が、しかし、この写真集では、「ドローイング」がほどこされています。
 長島さんが「ドローイング」をほどこさないで作品を日本で発表できる日は、まだまだ先になりそうです。

 ちなみに、私が一番好きな写真集は荒木経惟さんの「さっちん」です。
 たまに眺めると、止まっていた何かがグルグルと高速回転し始めます。

 今回、税関支署長の処分の取消し等を求め、原告となって争われた社長さん、さらには訴訟代理人をつとめられた弁護士さんに敬意を表したいと思います。戦う、争うって大変だから。プロのカメラマンなどの方々からの支援とかあったんだろうか。
 にしても平成11年の出来事に対し、平成20年に結論が出るなんて。
(おわり)

2007年9月 7日 (金)

成功談よりも、失敗談【松井】

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 人のことを思って話をするとき、成功談よりも失敗談の方が役に立つ。自分はこんな失敗をした、あんな失敗をした。・・・だから、あなたは同じ轍を踏むことがないように、という話。



 これに対して、成功談はどうか。成功にはいくつも道筋があって、それだけが成功に至る一つの道とは限らない。
 その人がそれで成功したからといって、同じ事をすれば成功するというものでもない。
 一方、失敗談は、その人がそれをして、あるいはある点が不十分であったばかりに失敗したという話については、その人の真似をしたらおそらく必ず、同じ道をいき、失敗する。
 
 失敗談の方が人の役に立つと思う。



 自分の成功談ではなく自分の失敗談を語れる人は、えらいなと思う。恥ずかしくて、普通だったらなかなか失敗談を話せない。

 司法修習中は多くの方々の講演、研修、話を聞くことがあった。だいたいが成功談であった。それも修習中の身、聞くこと見ること新しくもちろん勉強になった。
 ただ、そんな中でたった一人、大勢の修習生を前に、ご自身の大失敗の話をされた方がいた。
 話をされながら、当時の悔しさを思い出されたようで涙声になっていた。
 アメリカの裁判所での担当裁判官との衝突、和解決裂、そして敗訴。

 この話が一番記憶に残り、実益に繋がっているように思う。

(おわり)

2007年9月 6日 (木)

ないものに気づく能力~趣向変更【松井】

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 趣向を変え、気づいたこと、思ったことをもっと気軽に記録としてアップするようにしてみようかと思います。いつまで続くか・・・。


2 
 「あるべきものなのに、それがないということに気づくのが大切。」。
 「ないことに気づく能力」。

 仮面ライダー・カブトの決めぜりふ。「昔、おばあちゃんが言っていた。」
 がばいばあちゃんでブレイク中の島田洋七の決めぜりふ。「ばあちゃんが言っていた。」ではありませんが、
 司法修習中、お世話になった検察教官が言っていました。
 ないことに気づくのが大切なんだ、と。

 また、「問題解決能力」より、「問題発見能力」の方が大事だと。
 問題は、発見できれば、解決策は他人の知恵を借りたりしてなんとかなることの方が多いけど、そもそも問題を問題として認識できなかったら何にも始まらない、と。

 ときどき、この言葉を思い出します。



 で、あるべきものが、ないことに気づくためには、そもそものあるべき姿、問題のない姿を知っている必要があります。
 こういう状況であれば、これこれこういったもの、こういったやりとりがあるはずだといった思考力。
 人間や、物事に対する、日頃からの深い洞察力、観察力、注意力、教養が必要です。

 アガサ=クリスティの「ミス・マープル」シリーズが大好きでした。小さな村から出たことがないおばあさん、ミス・マーブルが、小さな村の中での人間模様をもとに難事件を頭の中で解決するシリーズです。
 どんな仕事をするにしても、人に対する好奇心がないと何をやっても多分うまくいかない。どんな仕事も大変だし、大変だからこそ楽しめるのか、推理小説を読むように。

(おわり)